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 ポタラ宮を後にして、河口慧海ゆかりのセラ寺へ行った。ラサから3kmほどのところにあり、不気味な岩山の麓にあった。閑静な山の中だと思って歩いていくと、寺の中には入らないで、境内にある中庭に近づく。すると妙ににぎやかな声がしてきた。セラ寺の名物、問答合戦の修行中であった。チベット仏教の経典をどれだけ暗記しているかを、質問に答える問答形式で試す。僧たちが2人一組になり、立っている僧が大きな動作で手をたたき質問する。座っている僧がそれに答えるというものだ。中庭一杯になるほどの多くの僧たちが繰り返す問答には迫力があった。多くの観光客がその様子を見学していた。

 ところで、まだ鎖国状態だった100年以上も前、日本人の河口慧海がこの寺でチベット仏教を学んだということで、ちょっと親しみも感じないではないが、それよりもお寺の裏山の不気味さが気になる。

                    
     セラ寺は静かなたたずまいのうちにあった             問答修行をする若い僧たち(拡大)           
 そういえばチベットでは鳥葬の儀式が行われるという。そしてこのセラ寺の裏山に鳥葬の丘があると色川大吉の「雲表の国」(チベット踏査行)に書かれている。そのことを思いながらこのセラ寺に立つと、なにか異様な雰囲気を感じないではいられなかった。鳥葬は死体をバラバラに解体し、粉々に砕いて、集まってくるハゲワシに食べさせる葬送の方法だ。その様子は、「解体の最後は、首から切り離された頭を股ぐらに挟み込んできれいに皮をむき、象牙色にむき出しになったその頭蓋骨を、ひと抱えほどの大きさの岩を持ち上げてたたき割るのだ。『カシャーン』と陶器の壊れるような音がする。遠くの方まで響きわたるその済んだ音を聞きつけて、二メートルほどもあるハゲワシの群れが風切り羽を五本指のように広げて、制動をかけながらつぎつぎと舞い降りてくる。」と根深誠の「風の瞑想ヒマラヤ」に詳しい。セラ寺の裏山を見たとき、そのことが思い浮かべられて、不気味な感じに襲われたのだ。
                            
 セラ寺の裏山は不気味さを漂わせている   夕方のポタラ宮をもう一度見に行った(拡大)   チベットらしいヤクの踊り
 この日の夕食はレストランでヤクの踊りなどのチベットの民族舞踊を見学しながらのチベット料理だった。料理もおいしかったが、華麗な民族衣装で踊る素朴な踊りに堪能した。夜、ホテルに帰ったものの、ポタラ宮の夜景を遠くで目にして、どうしても見たくなり、タクシーをとばして3度目のポタラ宮見学をした。ライトアップされた幻想的な宮殿と、流れてくる民族音楽とがえも言われない異国情緒を醸し出していて、大いに満足だった。
                    
 チベット娘のラインダンス(拡大/動画あり)  正装のチベット娘(拡大)     ライトアップされたポタラ宮(拡大)