さらに列車は高度を上げて、永久凍土地帯を走る。そして海抜4600mの崑崙山トンネルを抜けるとココシリ(可可西里)自然保護区に入る。この自然保護区には中国第一級の保護動物チベットカモシカやチベット野ロバ、蒙古ガゼルなどがいるそうだが、実際に目にしたのは野ロバ20〜30頭の群れのいくつかだった。ここでは鉄道も国道もこの自然保護区の中を走る。彼方には遠く崑崙山脈が横たわり、果てしなく広がる草原の眺めはすばらしい。
                     
       崑崙山トンネルに向かってさらに高度を稼ぐ(拡大)      ココシリ自然保護区の中を鉄道も国道も走る(拡大)

 やがて風火山トンネルを抜けるとトトホー(沱沱河)にさしかかる。ここには長江源頭第一橋がある。つまり長江に架かる初めての橋ということである。あの長江がこんな奥地に端を発しているのかと気が遠くなる思いがした。やはり平原の川はスケールが違う。源流といえども川幅が半端ではないからだ。

 乗客たちは少しでも多くの景観を楽しもうと通路側のいすを陣取って車窓を覗いている。ところがうちの家内といったら、初めのうちの元気はどこへやら、高山病の症状で、とうとうガイドの張さんに酸素吸入のセットを手に入れてきてもらって、列車の酸素吸入口から酸素を吸いながら横になっている。私は列車内は酸素濃度を保ってあると信じていたので平気だった。
       トトホーの長江源頭第一橋を渡る列車(拡大)          乗客は通路のいすから景観を楽しむ

                                                       

 やがて昼食の時間となり、食堂車へ行く。幾両もの寝台車を通り抜けて行かなければならないのがつらい。中国の人が通路で弁当を食べていたり、立ちふさがっていたりして通りにくい。昼食は中華料理だった。まだ料理の内容も検討中だから、意見がほしいとガイドに尋ねたりしていて、真剣さが伺える。

 昼食の間にも列車はどんどん高度を上げていくのだが、そんなにきつくない。苦しんでいた家内も食堂車ではとても楽になったという。食堂車だけはたしかに酸素が濃い気がした。昼食を終えて指定席に帰り、しばらくおしゃべりしているうちにいよいよ列車は世界最高所の鉄道通過点、タングラ(唐古拉)峠にさしかかる。標高は5072mだ。ここのタングラ駅は標高5068mで世界一高所にある駅だ。心なしか息苦しさもひとしおだった。この駅では列車は停車したが、私たちの車両は最後尾の方なので、駅の標識や、最高地点という記念碑なども見損なってしまった。峠を下ってチベット側にはいると、聖なる湖ツォナ湖が見えてきた。列車はしばらくツォナ湖畔を走る。
                    
        鉄道の世界最高地点タングラ峠に近づく           チベットの聖なる湖の一つツォナ湖

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