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 列車は不毛の荒れ地をひたすら走る。砂漠・岩山・水の涸れた谷と風景は様々に変わる。その時々に歓声を上げたり、感想を言い合ったりする部屋のメンバーは変わらない。琵琶湖のほとりから来たというNさん(77歳)と大阪寝屋川のMさん(69歳)、それに現地ガイドの張さん、それと私たち2人。今まで行った旅行の話なども織り交ぜながら楽しい時間が流れた。なにせ乗車時間が26時間もあるので、たっぷりおしゃべりできる。

 一瞬窓の下に流れが見えた。塩湖以外にしばらく水を見ていなかったので、「あっ!川だ。」と誰かが叫んだ。すぐに車窓からは見えなくなったが、その青い水が深く大地を抉って蛇行していたのには感動した。

 青蔵鉄道は西寧からラサまで全長1956km走る。そして4000m以上の高地を940kmも走る。その間、いにしえからの交易の道であった、今こそ完全舗装されている青蔵公路(国道109号線)とほぼ並行して走る。車窓からトラックや乗用車が走っているのが見える。

                       
           崑崙山脈の雪解け水が流れる川(拡大)           青蔵鉄道は青蔵公路と並行して走る(拡大)
 やがて崑崙山脈が近づいてきた。川の流れに沿って一つの集落があった。ガイドの張さんによると昔から輸送を担ってきた中国軍の施設だという。列車は次第に高度を上げ始め、蛇行を始めた。いくら牽引用のディーゼル機関車を2台繋いでいるとはいえ、崑崙山脈・タングラ山脈・ネンチンタングラ山脈の三大山脈を越えるには、やはり蛇行しないと登れないのだ。
                  
   川沿いの集落は軍の施設だという(拡大)   蛇行しながら鉄橋を渡り高度を稼ぐ     蛇行しながら崑崙山脈をめざす(拡大) 

 しばらくおしゃべりをしていたところ、前方の岩山の向こうに雪山が見えてきて、みんなで歓声をあげる。崑崙山脈だ。美しい峰は玉珠峰という山だ。だんだん近づきながら形を整えてくる。裾野は広い草原で秀峰には雪を頂くこの美しさは、私たちにとっての最高の贈り物だ。この列車に乗ることができてよかったと思える瞬間だ。列車はやがてこの山脈をトンネルで越えていくのだ。

                  
   遠くに崑崙山脈の山々が見えてきた     美しい雪山と草原とテントの風景(拡大)   陽ざしを浴びる雪山と小さな氷河(拡大)