北禅寺は西寧の町はずれの山の崖に建てられていた。垂直の崖にも伽藍がいくつもあって、そこまで昇る階段が急なことと言ったらない。
西寧に着いたとき少し息苦しいとは思ったものの、一夜明けて観光が始まるとそのことは忘れてしまっていた。ところが、北禅寺の階段を昇りはじめて急に息苦しくなり、空気が薄いことを思い知らされることになった。高いところに登っていくからではない。この地そのものがもうすでに空気の薄い高地なのだ。激しい運動をすることは慎まなければならない。そうでないと頭痛・吐き気といった高山病の症状におそわれるからだ。ゆっくりゆっくりと登っていく。グループの何人かは、登ること自体を取りやめて下で休んでいることにしたようだ。けれども、上まで登って西寧の街を眺望したときには、息苦しさも吹っ飛んでしまった。
下りるときは迂回路のゆるい坂道を下ってバスに戻り、次の見学場所であるイスラム教のモスクへと向かった。西寧市東関清真大寺というのが正式名称で、端正で威厳に満ちたモスクだった。モスクといえばエジプトのモハメド・アリモスクへいって、内部の詳細なところまででしっかり見せてもらったのでおよそ見当はつく。内部のがらんどうの広さ、ドームや内部の装飾の美しさには感嘆したものだ。中国にもこのような偉大なモスクがあと三つあるということで、イスラム教徒が中国にも多くいることをはじめて知った。そういえばシルクロードはイスラムの国へと続いているのだ。
礼拝の時間からはずれているらしく、境内は森閑としていて何人かの信者がたむろしていた。誰もが穏やかで優しそうな雰囲気で、イスラム過激派のイメージにおびえる私たちの感覚からはほど遠い感じだ。本来、信者とは宗派は別として、こうあるべきはずだ。敷地内にあった展示室にも入り、イスラム教の説明を受け、質疑応答もあった。私たちには目新しいコーランがあった。