飛行機を降りたとき、遠くに三危山という山が見え、その岩肌の美しさに思わず歓声をあげた。また空港を取り巻くポプラの防風林の素朴でおおらかな風景に、なんとも懐かしい思いに駆られた。小さな空港の建物も気に入った。



敦煌空港から三危山を見る(拡大)




小さな敦煌空港ビルの前で(拡大)


 ところが、とんでもないと言えば本当にとんでもないことが起こってしまった。竹下総理と平山郁夫氏が敦煌に来られているということで、われわれのツアー計画が狂ってしまった。まず予約してあった敦煌で最高のホテル、敦煌賓館を一行の宿泊のために追い出されて、新築したばかりの敦煌大厦に入ったのはよいが、当てられた311号室は電灯もコンセントも故障。その上、風呂の湯が出ない。他の部屋も同じような状況で大騒ぎして修理してもらうことにして、夕食をとりに中華料理のレストランに行く。そのあと美しい砂山の鳴沙山へ出かけた。
 途中の田園風景は、まさに日本の40年前くらいの感じで、歩く人や自転車が多く、耕耘機にリアカーを繋いで車代わりにしていて、驢馬に馬車を引かせて農作物を運んでいる。
 鳴沙山に着くと、折からの満月が夕空にぽっかり浮かんで、まるでロマンチックなお伽話の世界に入ったようで、砂ばかりでできた300mほどの砂山の美しさに魅せられた。そこで一人10元(120円程度)払って、らくだに乗せてもらい、1kmほど砂漠を歩いた。「月の砂漠をはるばると、旅のらくだが行きました。・・・」と口をついて出て、夢のような気分に浸ることができた。


らくだで鳴沙山へ向かう(拡大)


 ホテルの変更であれこれあったけれど、この素晴らしい気分が味わえたのだからありがたい。ホテルは何とかお湯が出るようになっているので、シャワーでも浴びて明日のために眠るとしよう。明日も莫高窟が素晴らしいに違いない。



8月22日(月) 敦煌 晴れ
 
 今朝も例によって早起きして、5:30にはホテルを出て、ジョギングで敦煌賓館まで行ってみた。本来私たちのツアーが泊まることになっていたホテルだ。小さな町なのでそんなに遠くはなく、15分ほどで帰ってきて、今度は辰子と一緒に散歩しながら、もう一度敦煌賓館まで行った。
 日本の要人たち、竹下総理や平山郁夫氏が泊まっているというわけで、ものものしい警戒を始めていた。
 ついでに町の様子を見て回った。砂漠の町らしく、とても埃っぽい。老人が家の門の前を掃いている。猛烈な砂埃が上がっている。結局その砂は隣の庭に降りる。それをまた掃いて埃を巻き上げる。大変だ。そこで散水車が道路に水を撒きながら通り過ぎた。そのあとしばらくは、ほこりは立たないが、時間の問題だ。空気の綺麗な津山に住んでいることの幸せを思う。
 朝食は昨日と同じ中華料理で、朝昼晩のメニューが変わらないのが妙だが、栄養はたっぷりだ。
 いよいよ莫高窟の見学に行く。バスに乗って、敦煌の町を出て、砂漠を走る。その途中、広大な砂漠の中に、ポコポコと小さな砂山がある。それはなんと漢民族のお墓だという。一人の亡骸を埋めて、その上に砂を盛る。それだけのお墓だ。砂嵐で砂山が吹き飛ばされるので、春に1回砂山を作り直すのだそうだ。無数に続くその小山を見て、ワシントンのアーリントン墓地を思いだし、無常観に浸った。


  

オアシス都市敦煌は緑の海の中にある(拡大) 

 15kmくらい車で走ると、鳴沙山と三危山との接するあたりのオアシスの中に莫高窟はあった。



莫高窟はオアシスの中にあった(拡大)

 

 


 

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