ムガール帝国の赤い都城も今は沈黙している


物静かな子供たちに出会った

 ごみごみした町を走って、この旅で一番期待を寄せていたタージ・マハールに着いた。遠くから白いドームが見えたとき、思わず胸がときめいた。遠くからでもその清楚で端正な様子がうかがえる。少し手前でバスを降り、多くの観光客の行き交う中を歩いて、タージ・マハールに近づいていった。


タージ・マハールの遠景

 タージ・マハールはムガル帝国の皇帝シャー・ジャハーンが、亡くなった王妃のために作ったお墓で、真っ白な大理石のドームが青空に浮かび、全く左右対称な姿は、この世のものとは思えない美しさだ。


どこから見ても左右対称のタージ・マハール

 タージ・マハールは全部大理石でできているとはいうものの、ほんの一部つまり全体の1%だけ砂岩を使用し、後の99%が大理石でできている。100%はアラーの神にしかできないことを知っていた王は、99%にとどめたのだという。
 ふと辰子がつぶやいた。「義貴がとてもすばらしかったと言っていたけど、どんな気持ちで見たんだろう・・・」と。私はその言葉で、このタージ・マハールの前に一人で立っている義貴を想像して、思わず目頭が熱くなった。きっと私たち親にも、この素晴らしさを話したかったに違いないと。しかし彼は、この後も一人黙々と旅を続けたのだ。
 奥さんの霊廟をこうして作った王は、今度は自分の霊廟をヤムナー河の対岸に、金と銀の橋を渡して、黒い大理石で作るつもりだったが、国が破滅するからと、息子の王子にアグラー城内に幽閉されて、夢は叶わなかった。
 それから次はアグラー城へ行った。



夕日に映えるアグラー城の入口

 アクバル王がムガール帝国の権力の象徴として築いた城で、宮殿やモスクの他、ヤムナー河の流れの彼方のタージ・マハールがひときわ美しく見える景観がすばらしい。


堅牢な城塞の側面もあるアグラー城


レンガ色と緑のコントラストがすばらしい

 アグラー城の見学で今日の観光は終わった。バスの車窓の珍しい風景と、世界遺産の遺跡とを、存分に見ることのできた、充実した一日だった。


 


 

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