特に印象に残ったのは、石畳の道路の石が5cm ほど掘れて、馬車の轍が続いていることだ。馬車の車輪が石を彫り込んでしまうほどこの都市の歴史は続いていたのだ。
 昼食はやはりスパゲティで、昨夜とほぼ同じメニューだった。日本のように、朝食と夕食のメニューが違うというようなことはないらしい。昼も夜も同じものを食べるのだ。


 次はすぐ近くのナポリに行った。ナポリ湾とそこに突きだした美しい半島の建物との組み合わせは、世界一の風光と言っていいだろう。一斉に驚嘆の声をあげながらシャッターを押し続けていた。これこそ最高のアングルだろうと思った。しかし、考えてみると、今まで、この旅に出て、何度も最高の物を見たような気がする。ロンドンのビッグベン、大英博物館、バチカンのサンピエトロ寺院、ローマのコロッセオなど、日本で言えば、日本の最高の観光地を2つほど見て、次の国へという訳だから、富士山と日光東照宮ぐらいに相当するのだろうか。そのようにして、6カ国を回るのだから、最高のものばかり見られると言うわけだ。この旅の素晴らしさが実感される。

 



  
        ナポリの景観(拡大)  

 また太陽の高速道路を走り続けてローマに帰り、ホテルに着くとすぐ外出し、近くの店でワインとミネラルウオターを買った。ワインが270円ぐらいで信じられない安さだ。
 今日はその他にカメオの工場にも寄った。日本では54万円もするというカメオが、最高級品でそれでもここでは17万円だという。辰子が「どうせ買うならこれだわ!」などと言うものだから、イタリア人の売り子はドギマギしていた。


    

  最高級カメオは54万円(拡大) 

 

 入口のところに、現地人がいて、日本人相手にニセの指輪や時計を売っていた。幾ら1.000円の時計が安いといっても、ホテルに帰った頃にはもう動かなくなっているというようなしろものなのだ。それなのにこれらを買う人がいるというのが、困ったもので、現地の人もだから止めない。これがイタリアのインフレで失業率の高い現在の経済状態の象徴とも言える。


 車は接触しても平気とばかり、デコボコした中古車が多く、自転車には必ず太い鎖が巻いてある。両替でもごまかされる。トイレは有料と言うか、チップがいるが、それはトイレを掃除する人の給料を補うものらしいから、仕方がないと思って、「グラッチェ」と言いながら500リラ(50円)を渡す。割が悪いとはわかっていたけれど、どうしても必要なので、ホテルのフロントで両替をしたら、2.000円で17.000リラしかくれない。3.000リラも手数料を取られる。これもイタリア経済の現実だ。



8月26日(土)晴れ 雷雨 大雨


 今日の行程は強行軍で、ローマから一気に西ドイツのフランクフルトへ飛び、ライン川クルーズをして、ハイデルベルクまで行くというものだ。しかも、天候が悪化した。
 朝わずかの時間、例によって散歩をして、土産の絵はがきとタバコを買った。朝のうちは晴れていて、気持ちが良かった。ローマ空港で待っているうちに雷雨になった。久しぶりに雨に遭う感じだ。今まで恵まれ過ぎていた。


 ローマ空港を少し遅れてフランクフルト行きのアリタリア航空のジェット旅客機が飛び立った。2時間ほどでフランクフルト空港に着いた。荷物が出てくるのを待っている間に空港の様子を見ると、小銃を肩にした兵士が三々五々歩いていて、一寸緊張する。「サングラスは外せ。カメラはノー。」と身振り手振りで言われてびっくりした。
 「グラッチェ」という言葉はもういらない。「ビッテ」と「ダンケシェーン」が必要だ。やっと覚えた言葉がもう国が変わって通用しない。
 バスに乗り換えて、ライン川クルーズに出かける。アウトバーン(高速道路)の広さは想像以上で、片方が7車線のところもあった。スピード制限も120km/hが普通で、無制限のところもある。

 

速度無制限のアウトバーン(拡大)

       

 ライン川は川幅が広く、かなりの速さで流れていて、今回私たちは有名な歌の名所であるローレライの岩の近くの、ザンクトゴアハウゼンからスタートし、アスマンズハウゼンまでの2時間ほどのあいだ、船上からの眺望を楽しんだ。豊かな水の流れと、両岸の緑と、山の中腹の古城がまるで絵画のように続いていた。



ライン河畔の眺め(拡大)

 


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