朝は雨が降っていたが、曇りからだんだ晴れ間が見えるようになり、好条件になってきた。なんといっても今日はアルプスに登る日なんだから・・・。
 バスでラウターブルネン駅に着くと、そこからは登山電車に乗り換えて、いよいよ標高 3,454mのユングフラウヨッホへの登山の始まりである。

 
 
ラウターブルネン駅(拡大)


 登山とはいっても、傾斜 60°の斜面を、アプト式という、レールの中央にもう一本の歯車の付いたレールに歯車をかみ合わせて、登山電車が登ってくれるわけで、乗客たちは、ただはしゃいで、あのロッククライミングで有名なアイガー北壁の壮大な絶壁が、威圧するかのように垂直にそそり立っているのを見て、驚嘆の声をあげるばかりである。そのうえ、今朝にかけて降った新雪の、まばゆいばかりの輝きが、その景色に一層の美しさをプレゼントしてくれていた。アルプスで好天に恵まれたことは、この上ない好運であったと言えるだろう。


 
新雪に輝くアイガー北壁(拡大)



クライネシャイデック駅の前で(拡大)



感動一杯の辰子


 中腹のクライネシャイデックという駅からは、ユングフラウ鉄道に乗り換えて、今度は1時間ほどかけて、トンネルを抜けると、ユングフラウヨッホの展望台に出る。展望台からは、ユングフラウヨッホの頂上や、雪に覆われた氷河の流れや、新雪が降ったばかりの雪原が目前に迫って、感嘆の声をあげた。


ユングフラウヨッホの頂上(拡大)


 
  
何億年も流れ続ける氷河(拡大)


 スキー場もオープンしていて、わずかではあったが、滑っている人がいた。時間に余裕があれば滑りたかったが、時間と競争のような旅行中なのであきらめた。
 氷河の中を刳り抜いたトンネルもくぐった。何億年前の氷河かわからないという氷の壁に触れて、何か神秘的な気持ちになった。多くの外国人観光客がいて、そういえばここは、世界有数の観光地なんだと改めて思った。
 寒さが心配だったが、長袖シャツにセーター、辰子はブラウスとカーディガンで何とかしのげた。もちろん、電車が暖房をしてあったり、建物の中で過ごす時間が多いからで、また、快晴になった太陽が、暑いくらいの日射
しを、さんさんと注いでくれたからでもある。


 下りはクライネシャイデックから登りとは別の、グリンデルワルトへのルートだったが、またそのルートから眺めるアイガーの北壁の威容さは、筆舌に尽くせず、「言葉では言えない。ここでこうして見なければ。」と言うしかない気がした。麓の方へ下りてくると、今にもアルプスの少女ハイジが出てきそうな、緑の中の小さな家がいくつも目に付いた。


ホルンを吹く人に見とれる辰子(拡大)


 山羊や羊もいて、このあたりは昔の生活とあまり変わっていない感じがした。あのロンドンやローマの騒々しさには、縁のない世界だった。


ハイジの出てきそうな麓の村

 

 


 

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