12月28日(土)

 今日は移動日なので、少しゆっくりと朝の支度をする。荷物をまとめ、今日訪れるアレキサンドリアで必要な1泊分の荷物を別 に作って、スーツケースは預けた。9:30に下船するまでの時間、デッキに上がって眺めを楽しんだ。ナイルの川面 を渡ってくるさわやかな風に吹かれていると、遙かかなたの霞の奥に浮き上がってくる王家の谷、王妃の谷のある山が、今日は懐かしく見える。あの山懐に王たちの眠るお墓があった。あの雄大なピラミッドとは逆に、ひっそりと隠して作られた王たちの墓が、盗掘を懼れたことが理由と知って、何故か悲しかった。死んだらすべて終わりなのに・・・。


船のデッキから王家の谷を指さす辰子

 下船してバスに乗り、ルクソール空港へ向かう。ルクソールもこじんまりしたいい町だった。空港に着いて、搭乗する飛行機を見て笑ってしまった。来るときアスワンまで乗った同じ飛行機だったからだ。しかし、来るときに心配だった、窓から見えていたタイヤがつるつるに摩耗していたのだけは取り替えてあって、流石だと思った。


再び来たときと同じプロペラ機に乗る


ナイル川には中州もある


 飛行機はナイル川のグリーンベルトを横切り、砂漠の上を飛び続けたが、途中強風のため大揺れがして、辰子が気分を悪くしてしまって、心配した。地上は砂嵐が吹き荒れていた。1月から2月にかけて砂嵐の季節だという。今日はその走りかもしれない。
 カイロについてすぐバスに乗り、一路アレキサンドリアへ向かう。カイロの街は大きい。バスに乗って1時間走っても、全く眺めの変わらない街並みが続いた。


賑わうカイロの街

 途中、死者の街というところがあって、いわゆるイスラムの墓場があった。モスクの屋根のような小さいドームがポツンポツンとあって、その下には遺体がそのまま置いてあるという。それらが街のど真ん中を広々と占領しているのだ。何か異様な風景だった。


死者の街(墓地)が延々と続く

 カイロ市内の道路は渋滞していた。その様子を眺めながら気がついたことをまとめてみることにする。
1.車のガラスを拭く少年がいる
 渋滞で停まっている車のボンネットを少年がやってきて拭こうとする。それを運転手が手のひらを向けて制止する。もしそのまま拭かせておくと、フロントガラスを綺麗に拭いて金を取る。少年たちもたくましい。
2.信号は1つもない
 まるで神戸の三宮ぐらいの交通量なのに、車線がなくて、一方に4列ぐらい車が並んで渋滞している。そんな交差点にも1つも信号がない。交通 整理もしていない。それで事故もないというから不思議だ。人はそんな車の中を縫って歩く。ものすごい混乱の中に活気が漲っている。すごい活力を感じる。

 


 

 

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