3月23日 (日)ニューカレドニア・ヌーメア 快晴

 ヌーメアの朝は小鳥のコーラスで目が覚めた。6:00だった。すでに明るい日が射していた。ベランダに出ると見知らぬ 鳥たちが飛び交い、さえずっていた。目を転じると、すぐ前が海だ。近くに小さな島も浮かんでいる。まさに夢のような世界だ。ところがいざ自分たちのこととなると
、現実は厳しい。 まず部屋に備え付けの金庫が空いたままでロックされていて使えない。仕方なくフロントでセーフティーボックスを利用しようと申出ると、8:15でないと担当者が来ないという。それもフランス語でしゃべるので、英語で聞き返してやっと分かるというわけで、余分の話は通 じない。8:00には観光のバスが出るので、結局貴重品は一日中持って回る羽目になる。
 朝の観光は 昨日着いてから予約した、「ヌーメア・プチ 観光」という、ヌーメアの人気観光スポット である@ウァントロの丘AFOL の丘B朝市という3カ所を巡るツアーだった。
 ウァントロの丘からは南太平洋の広大な海が見渡せた。遠く無人島もいくつか見えて、中でも白くて背の高いアメデ灯台が目に付くアメデ島も見えた。日にちがあればぜひ行ってみたい島だが、今回は行けない。遠くからその美しさを想像してみた。丘の上には第二次世界大戦当時、日本軍が攻めてくるかも知れないと、フランス軍が設置した大砲が2基残されていた。なにかとても場違いなものが置かれているように感じた。
 続いて FOL の丘というところへ行った。ウァントロの丘が海を見る名所なら、 FOL の丘はヌーメア市街を眺める名所といえる。セント・ジョセフ大聖堂の塔越しに、ポートモーゼル湾に沿って広がるヌーメアの市街が美しく一望できる。やはり本国フランスのムードが漂う街だ。
 その丘を下って、湾に沿って建つ5つの立派な建物で 行われている朝市に行った。地元でとれる野菜や果 物だけでなく
、 あらゆる民芸品のような土産物がところ狭しと並べられていた。そこでともかく大瓶の水のボトルを買った。今日はこの後無人島へ行くのだから。
 10:00集合となっていたポートモーゼル湾の船着き場に行くと、定員20人と言っていた双胴船のヨットには、私たちを含めて6人の日本人と、7人ほどのフランス人らしい人が乗ってきた。
船は結構大きいので、ゆったりとしていた。 青い海の上を1時間足らず走って、遠ざかるヌーメアの街や島の岬の眺めを楽しんだ。全長400km のグランドテール島にもかなり高い山があって、海から眺めるととても綺麗な形をしている。やがて水平線のかなたに小さな島が見えてくる。東京から出張してきて、今回初めてガイド役をしているという K さんが「あの島へ行くんですよ。」と教えてくれる。初めての無人島上陸に心が弾む。見る見る島が近づいてくる。それと同時にいくらか失望もよぎる。余りにも島が小さいことと、既に島の周りに沢山のヨットやボートが停泊していることだ。無人島とはいえ、昼間は100人を超える人々の訪問を受ける有人島だ。
 ヨットが止まると、水中眼鏡とシュノーケリングのセットにフィンを持って、ゴムボートに乗り換えいざ島へ。島の周りは珊瑚礁 で、淡いブルーのとても綺麗な海の色だ。その上を進んで島の砂浜に着くと、パウダーサンドと呼ばれる珊瑚の砂で真っ白のビーチで、すでに多くの人たちが楽しんでいる。日光浴をしていたり、ビーチパラソルの中で休んでいたり。そしてびっくり。歩いたり座ったりしているフランス人の女性がほとんどトップレスなのだ。じろじろ見るわけにはいかないが、嬉しい眺めではあった。
もっとも美しく突き出ているとはかぎらないものの方が多かったが、おおらかで、ナチュラルで、これだからこそリゾート地と言えるのだろう。
 さて、水中眼鏡を着け、シュノーケルをくわえて、足にフィンを着け、いよいよシュノーケリングを始める。
パウダーサンドの浜辺から、だんだん深いところへ泳いでいき、岩や珊瑚が茂っているところへ来ると、そこには色とりどりの魚たちが群がっている。朝食の時パンの残りを持ってきていた家内が、隠していた水着の中からとりだして、もみほぐして魚たちにやると、魚たちはそれを競って食べに来る。それがとてもかわいらしい。そして時々大きな魚もスーとやってきて、餌を食べるとすぐ逃げていく。それらの姿を見ながらしばらく楽しんだ。
 午前中のシュノーケリングは1時間足らずで切り上げて、再びヨットに戻り、船上でバーベキューランチをいただいた。バーベキューとエビとサラダにフルーツとパスタとフランスパンのメニューで、おかわり自由の満足できるおいしさだった。自前の缶 ビールの味も格別だった。
 午後は2時間の自由時間ということで、再び島へ上がって過ごす人が多かったが、私たちは今度は直接ヨットから海に入り、島に向かって泳ぎながら魚たちを見ることにした。そしてゆっくりと泳ぎながらサンゴの上に群がる魚たちを見て楽しんだ。また昼食の時のフランスパンのかけらを持ってきていたので、それを魚たちに与えて遊んだ。初めのうちはパンくずをまき散らしながら移動していたので、魚たちが多く集まるまでにその場を去ってしまい、見逃していたが、やがてコツが分かってきて、パンくずを播いた場所にじっととどまっていることにした。するとしばらくして小さな青やオレンジの魚だけでなく、大きなカワハギのような魚とか、クマノミとか、ピンクの魚とか、縞模様の尾にも目があるチョウチョウウオとかがいっぱい集まってきて、かわいくて、きれいで、めまいがしそうだった。3,4年前からダイビングを始めて、海の魚は色々見てきたが、ダイビングでは海流の流れにのって移動することが多く、一つところにとどまっていつまでも遊んでいるということは少ない。それにシュノーケリングだと、ボンベもいらず、酸素が無くなる心配をする必要もないから気楽で良い。とうとう1時間以上かけて Goe というこの無人島の周囲をシュノーケリングで一周してしまった。そしてヨットまで泳いで帰ってみると、自由時間がまだかなりあるというので再び海に入る。このとき一つ心配なことが起こった。ガイドの話の中で、ここでは紫外線が日本の7倍もありますから、日焼けがひどくなると大変ですから袖のあるものを着たり、日焼け止めをぬ ってください、と言っていたのを思い出し、船で島へ来るまでは T シャツを着ていたのに、シュノーケリングを始めるとき、水の中だから大丈夫だろうと T シャツを脱いで裸になって入っていたのだ。もう終わりに近くなってから気が付いて、船に上がってシャツを着て入った。実はこれはもうすでに遅かりし・・・であったのだが。
 最後に潜ったのは今日魚のいちばん多かったヨットのすぐ近くの岩礁の珊瑚の上だった。そこにはすでに色とりどりの大小さまざまな魚たちがたむろしていたが、そこでまたパンくずをまいて、さらに魚たちを集めて楽しんだ。珊瑚のしっかりしたのにじっとつかまって動かずにいると、目の前で魚たちが乱舞する。手が届きそうになるがじっとしている。ときどき魚の方が手をつつきに来る。かわいくてしかたがない。時間が過ぎるのも忘れて魚と戯れていた。家内も同じように魚に見入り、珍しいのがいると私をつついて教える。二人が子供のようにはしゃぎながら魚に遊んでもらった。身も心も魚になって、人間のすべてを忘れていた。 それでも島からボートで帰ってきた他の日本人の姿を見かけると、急に現実に引き戻され、急いで船を目指して泳ぎ、船に上がった。それで魚たちとは遠い別 れとなる。
 帰りの船では、来るときに逆光で暗かった山々が夕陽に染まるのを眺めながら、同じ景色をたどって帰った。船着き場にはバスが待ってくれていて、6人の日本人だけを乗せて、ホテルまで送ってくれた。ところがホテルの部屋まで帰ってカードキーでドアを開けようとしたが開かない。仕方なくフロントまで行って新しいカードを作ってもらってきたが駄 目だった。困っているところへガードマンらしき人がやってきたので、ドアが開かないと身ぶりで示して開けて貰った。そして着替えをしようとしてびっくり。背中と足の裏側だけが真っ赤っかなのだ。それを見たとたん、急にひりひり痛みだして、シャワーを浴びるのに痛くて泣く思いだった。やっと着替えて夕食に出かけることにしたのだが、ここでもう一つ試練が待っていた。私の左足のアキレス腱の付け根が相当痛みだしたのだ。たしかヌーメア空港に着いたとき、飛行機から降りて、入国審査に向かって歩きながら、ちょっと足が痛いという 感じはしていた。しかし、なんかの拍子のちょっとした痛みだろうと思っていたのだが、夕食のレストランに向かって歩き始めたとき、これはただごとではないと思えるほどひどくなった。でもびっこを引くのは格好が悪い、
つい見栄を張って無理をしてしまった。結局それが災いして、ますます痛みがひどくなり、食事も食べ残す有様で、歩いて帰る苦痛に耐えるのが精一杯だった。部屋に帰って荷物をまとめたが、集合時間まで未だかなりの時間があったが、部屋で休んでいて眠ってしまったら集合時間に起きられないと思ったので、ロビーまで荷物を持って出て、そこのソファー待った。バスで空港まで出て、搭乗するのにも無理をして歩いてしまった。また飛行機に乗れば約9時間じっとしていなければらない。関空に降りてからの足の具合が心配で、なかなか寝付かれなかった。

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