prologue

 20年以上も前のことだ。ふと通りかかった温泉の出る別荘地で、売れ残っている土地を見つけ、買ってしまった。当時、別 荘が建てられるとは思いもしなかったが、夢を買ったという思いだった。

 それにしても、よくもまあ長い間ほったらかしにしていたものだ。時には草刈りをするようにと、役場から指導を受けたり、隣のY 氏が草刈りをしてくれたこともあった。
 最近になって、しばしば草刈りにも行くようになって、荒れ果てた敷地を見ているうちに、「せっかくだから建てようか。」ということになった。

 それからというもの、あらゆるところへ、あらゆる建物を見に行った。「どうせ建てるなら最高に気に入ったものにしたい。」というのが、家内と二人の共通 認識だった。
 洋風建築、和風建築、在来工法、ツーバイフォーなどいろいろな建て方の多くの会社の建物を見てまわった。しかし、これだというものがなかなか見つからなかった。

 ある日京都に出かけた。フリージアホームという会社があって、「1年間に100棟だけ建てるから欲しければ頼みに来い。」というわけだ。「買ってくれ」とはいわない。「配給してやる」というわけで、頼みに出かけた。営業活動は一切してくれないから、契約にも、起工式にも、京都へ行った。全額前金で支払った。

 友人知人は話を聞いて驚いた。そして「やめとけ」と言った。そんな契約があるものか。会社がつぶれたらまるまるお金を棄てることになる。周りはうるさかったが、私たちは信じた。見学に行った家は確かに良かった。あんな家なら欲しいと強く思った。

 ログハウスである。材木はスウェーデンのキルナ山から切り出されたホワイトウッドである。十分に乾燥させD型にカットされたすばらしいものだ。しかもロシアからやってきたログハウス専門の技術者が建ててくれる。夢を託すには十分だった。

 という訳で、温泉の出る別荘としてログハウスを建てることになったのである。2001年の8月のことであった。

 

鷲峰山(じゅうぼうさん)をバックにした鹿野温泉別荘地の越路が丘